2025年バックエンド言語の動向:個人的所感


ITにおける技術進歩は止まることなく、特にバックエンド開発を取り巻く環境は、クラウドの普及や新たな技術の登場により、常に変化を続けています。皆さんが新しいプロジェクトを始める際、あるいは現在関わっているシステムの今後を考える際に、「今、どの言語がどのように使われているのだろうか?」「それぞれの言語にはどのような特徴やトレンドがあるのだろうか?」といった疑問を持たれることがあるかと思います。

この記事では、2025年現在、バックエンド開発において特に重要視されている主要なプログラミング言語たちに焦点を当て、それぞれの言語がなぜ選ばれているのか、どのような変化を見せているのかについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

バックエンドを取り巻く環境の変化

近年のバックエンド開発において、注目すべきいくつかの変化が見られます。

  • クラウドネイティブへの移行: コンテナ技術(Docker, Kubernetesなど)やサーバーレスアーキテクチャの利用が一般的になりました。これにより、アプリケーションの効率的な起動や、使用するリソースの量が、技術選定において以前にも増して考慮されるようになっています。
  • マイクロサービスアーキテクチャの普及: アプリケーションを小さな独立したサービスの集まりとして構築する設計思想が広がり、それぞれのサービスに最適な言語を選択するという柔軟性が生まれました。
  • AI/機械学習の活用: 多くのシステムがAI/MLの機能を組み込むようになり、これらの技術との連携のしやすさも言語選択の一因となっています。
  • パフォーマンスと効率性の追求: システムの応答速度向上や運用コスト削減のため、実行速度やリソース効率の良い言語が求められる傾向にあります。

このような背景の中で、主要なバックエンド言語たちはどのように位置づけられているのでしょうか。

主要バックエンド言語の現状と注目の動き (2025年)

それでは、個別の言語とその動向を見ていきましょう。

Node.js (JavaScript / TypeScript)

Webフロントエンド開発で広く使われるJavaScriptをバックエンドでも利用できるNode.jsは、開発効率の高さから依然として人気の高い選択肢です。特にAPIサーバーやリアルタイム通信を伴うアプリケーション開発で力を発揮します。

現状と動向: Node.jsエコシステムは成熟しつつも、さらなるパフォーマンス向上や開発体験の改善を目指す動きがあります。特に、高い実行速度やビルド時間の短縮を特徴とするBunや、セキュリティに重点を置いたDenoといった新しいJavaScript/TypeScriptランタイムが登場し、Node.jsの代替あるいは補完として注目されています。フレームワークとしては、TypeScriptとの親和性が高く、大規模アプリケーション開発に適したNestJSが、堅牢なバックエンド構築を目指す皆さんに選ばれています。

こんな時に良いのでは?:

  • フロントエンドとバックエンドで同じ言語を使いたい時。
  • API開発を迅速に進めたい、リアルタイム機能を実装したい時。
  • クラウドでサーバーレスの機能を作る時にも有力な選択肢となります。

Python

データサイエンスやAI分野で中心的な役割を担うPythonは、その強力なライブラリ群とシンプルな文法を活かし、バックエンド開発でも広く採用されています。

現状と動向: AI/MLとの連携が不可欠なバックエンドにおいて、Pythonの地位は揺るぎません。加えて、近年は、FastAPIのような非同期処理を標準でサポートし、型ヒントを活用して高いパフォーマンスと優れた開発者体験を提供するフレームワークの登場により、高速なAPI開発という側面でもPythonの評価が高まっています。データ処理やAI/MLモデルのデプロイと連携するバックエンドを構築する際に、FastAPIのようなフレームワークが効率的な開発を可能にしています。DjangoやFlaskといった伝統的なフレームワークも、それぞれ得意な分野で引き続き使われています。

こんな時に良いのでは?:

  • AI/ML機能やデータ分析との連携が必須のシステムを開発したい時。
  • 迅速かつシンプルにAPIを構築したい時。
  • 豊富なライブラリの恩恵を受けたい時。

Java

長年にわたりエンタープライズ分野で確固たる地位を築いてきたJavaは、その安定性、堅牢性、スケーラビリティが強みです。

現状と動向: クラウドネイティブ時代の要求に応えるため、Javaエコシステムは起動時間の短縮やメモリ効率の改善に注力しています。GraalVM Native Imageは、Javaコードをネイティブバイナリにコンパイルすることで、起動速度を大幅に向上させ、メモリ使用量を削減します。これにより、Javaがサーバーレスやコンテナ環境でもより実行しやすくなりました。Javaバックエンド開発のデファクトスタンダードであるSpring BootもNative Imageに対応しており、現代的なJava開発を牽引しています。QuarkusやMicronautといった、よりクラウドネイティブに特化した軽量フレームワークも使われています。

こんな時に良いのでは?:

  • 大規模かつ高い信頼性が求められる基幹システムを構築したい時。
  • Javaの豊富なエコシステムや技術資産を活用したい時。
  • パフォーマンスと安定性を両立したい時。

Go

Googleが開発したGoは、シンプルさ、高い並行処理性能、そして単一の実行ファイルにコンパイルできる手軽さから、クラウドインフラやバックエンドサービス開発で急速に普及しました。

現状と動向: コンテナオーケストレーションのKubernetesや監視ツールのPrometheusなど、多くのクラウドネイティブ技術の基盤がGoで構築されています。この分野におけるGoの地位は非常に強固です。バックエンドWebフレームワークとしては、GinEcho、パフォーマンスに優れるFiberなどが人気で、高速なAPIサービスやマイクロサービスの構築に広く利用されています。シンプルさを好む開発者に支持されています。

こんな時に良いのでは?:

  • 高い並行処理性能や迅速な開発・デプロイを必要とするマイクロサービスを構築したい時。
  • クラウドインフラ寄りのツールやサービスを開発したい時。
  • デプロイが簡単な単一バイナリでアプリケーションを配布したい時。

C# (.NET)

Microsoftによって開発されたC#は、近年その実行環境である.NETがクロスプラットフォーム対応を強化したことで、Windows環境にとどまらず、幅広いバックエンド開発で利用されています。

現状と動向: .NETプラットフォームは一つの統合された環境として進化を続け、バージョン8ではさらなるパフォーマンス向上や新機能が追加されています。バックエンドWeb開発の中心はASP.NET Coreであり、高い生産性と性能を両立しています。JavaにおけるGraalVMと同様に、.NETのNative AOT (Ahead-Of-Time) コンパイル機能が強化されており、C#アプリケーションの起動時間短縮とメモリ効率向上に貢献しています。これは、クラウド環境でのデプロイにおいて特に有効です。Azureクラウドサービスとの連携もスムーズです。

こんな時に良いのでは?:

  • .NETエコシステムに慣れている、Windows環境での開発が多い時。
  • Azureクラウドサービスを積極的に利用したい時。
  • 生産性の高いモダンなフレームワーク(ASP.NET Core)でWebアプリケーションやAPIを開発したい時。

Rust

メモリ安全性をコンパイル時に保証しつつ、C/C++と同等の実行速度を実現できるRustは、その堅牢性から注目を集めています。

現状と動向: Rustは、OSのコンポーネント、データベース、Webブラウザエンジンなど、高い安全性や信頼性、そして極限のパフォーマンスが求められるシステム開発での採用が増加傾向にあります。バックエンドWebフレームワークとしては、AxumActix-webなどが登場しており、特に高い可用性やメモリ安全性が不可欠なサービスでの利用が始まっています。学習コストは他の言語より高いとされることがありますが、その特性から、特定の分野で代替の難しい選択肢となっています。

こんな時に良いのでは?:

  • システムの障害やセキュリティリスクを最小限に抑えたい時。
  • 最高のパフォーマンスとリソース効率を追求したい時。
  • OSやインフラに近いレイヤーでの開発に携わりたい時。

PHP

Webサイトのバックエンドとして長年の実績を持つPHPは、特にCMS(コンテンツ管理システム)の分野で大きなシェアを維持しています。

現状と動向: PHP自体もバージョン8.x系で非同期処理のサポートや実行速度の向上など、モダンな進化を続けています。そして、なんといってもLaravelという強力なフレームワークの存在が大きいですね。開発に必要なたくさんの機能が揃っていて、PHPを使ったWebアプリケーション開発をとても効率的にしてくれます。新しいバックエンド開発で積極的に選ばれる機会は他の言語に比べて限られるかもしれませんが、世界中に存在する膨大な数のPHPで構築されたWebサイトの保守・改修ニーズは大きく、今後もWebバックエンドの一角を担い続けると考えられます。

こんな時に良いのでは?:

  • WordPressなどのCMSを基盤とした開発が多い時。
  • Laravelのようなフレームワークを使った効率的なWebアプリケーション開発をしたい時。
  • 既存のPHPシステムの運用・保守を行う必要がある時。

バックエンド言語を選ぶ際に考えること

これまで見てきたように、2025年のバックエンド言語の世界は非常に多様であり、それぞれの言語が異なる強みを持っています。皆さんが次に開発するシステムや、既存システムのリプレイスを考える際に、どの言語を選ぶべきかという問いに唯一絶対の答えはありません。

重要なのは、開発したいアプリケーションの特性(例:リアルタイム性、データ処理量、計算の複雑さ)、求められる非機能要件(例:パフォーマンス、スケーラビリティ、信頼性、セキュリティ)、開発チームの技術スキルや慣れ、そして利用したいライブラリやフレームワークのエコシステムなどを総合的に考慮することです。

今回ご紹介したそれぞれの言語の「今」を知ることが、皆さんの技術選定や学習の方向性を考える上での、何かヒントになれば幸いです。

終わりに

技術トレンドは常に動いていますが、主要なバックエンド言語たちは、それぞれの強みを活かしつつ、クラウドやAIといった時代の変化に合わせて進化を続けています。

この記事が、皆さんのバックエンド開発への理解を深め、今後の選択を考えるための一助となれば幸いです。

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